近年頻発するゲリラ豪雨の仕組みの解明を目指す!
1.温度・上昇流・水蒸気
まずは温度と上昇流と水蒸気の関係をみていく。
以下の図は、簡易な鉛直1次元モデルによる計算結果。縦軸は高度(㎞)、横軸は時間(分) である。
積乱雲が発生するために必要な条件は、不安定な大気成層をした下層付近に、周辺よりも暖かくて湿った空気が入ること。これにより直径数百mくらいの空気の塊が熱せられると、浮力(上向きの加速度)によって上昇流が発生。空気の上昇によって水蒸気は凝結し、この熱エネルギー(凝結潜熱)が一時的に上昇流を強めるが・・。
2.積乱雲内部における上昇流
もしも計算の過程で空気中の水蒸気を無視したら、上昇流は時間とともに(水蒸気がある場合と比較しておよそ2倍程度に)増大した後、定常な状態が永遠に続く。
空気中の水蒸気を考慮することで、単一の積乱雲内で発生した上昇流は雨の荷重で次第に弱まる。その寿命はおおむね数十分程度である。
3.線状降水帯(もどき)の数値実験
線状降水帯は、積乱雲が単一で終わることなく、列をなして次から次へと発生を繰り返す現象。
近年、発生の頻度が増えており、そのメカニズムを解析・把握しておくことは予測をする上でも重要である。
下図は3次元試作モデルの一例。
<40分後>
<50分後>
<60分後>
令和4年夏に記録的な大雨を記録した新潟県村上市周辺の地形データを挿入して計算を行い、北緯38.2°付近鉛直断面の一部を切り出したもの。風上側に積乱雲のトリガー(水蒸気と上昇流)を与え、西から風を入れることで雨雲の挙動を調べた。
青赤系の面コンターが雨粒、黒系の線コンターは雲粒。
初期条件などで与えた気象データは全てダミーであるが、断続的な雨雲強弱の様子が表現されている。